金融所得の税率より、日銀の株式購入のほうが問題

岸田内閣は、金融所得の税率を上げることを検討中らしい。一億円以上の所得があると、所得税の税率負担が低下しており、それを一億円の壁と言われている。中間層への配分を増やすとの政策の一環として、金融所得への課税を上げることを考えているとのことだ。

個人的には売買益に税金をかけるのは賛成だ。貯蓄から投資への流れを抑えるとの意見もあるが、売買益に20%の税金がついたぐらいで投資をしないのであれば、そもそも投資にお金は流れない。

そんなことより問題なのは、日銀が株式を買っていることだと思う。日銀が株価が下がるとマーケットを安定させるために、株を買っている。それによって株価は高騰し、例えばユニクロはPER40倍以上と通常の目線から外れた株価になっている。そして、それによって利益を得ているのは柳井さんを含め株主だ。日銀の金融政策は政治で選ばれた人が決めているわけではないので、富の配分を行なっており、株式の購入により株主にお金を配っている状態だ。なぜ日銀は、特定の人を優遇する政策をとっているのか。マーケットを安定させるためというが、日銀が買った株式の将来的な処分をどう考えているのか。もし株価が下落して、日銀のバランスシートが痛んだ時、円を保有している一般の人が大きく痛みを伴うのではないのか。そのようなリスクは先延ばししたまま、お金持ちである株主が得をすることを日銀はしており、それによって富の分布は拡大しており、将来的なリスクが高まっている。

金融所得の課税を議論する前に、日銀の政策を議論した方がいいのではないか。日銀は政府から独立しているものの、日銀の政策が富の分配をしていることが問題であり、富の分配はまさに政治が決めるものであるから、政治家による日銀の政策への介入はすべきだ。

岸田氏に日銀に踏み込むまで覚悟もないだろうし、マーケット側からやむをえずという状況にならないと今の政策が続くのであろう。中間層は、日銀の政策を理解している人は少ないので、わかりやすい富の分配だけが検討され、株主だけが得する世界は温存されそうだ。